補助金・助成金

【第1回公募】新事業進出・ものづくり補助金 申請ガイド
3枠の選び方から「足下の賃上げ」まで

2026年8月23日時点の公式情報にもとづく、中小企業向けの実務整理です。

「新しい製品を開発したい」「これまでとは違う分野に踏み出したい」。そう考えてはいるものの、設備投資の金額を前にして踏み切れずにいる。そんなお悩みをお持ちの中小企業経営者・個人事業主の皆様は、多いのではないでしょうか。

2026年、ものづくり補助金新事業進出補助金が統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」という一本の制度になりました。窓口も申請システムも中小企業基盤整備機構(中小機構)に一本化され、3つの枠から1つを選んで申請します。

そして2026年8月、審査に「足下の賃上げ」という新しい観点が加わりました。「補助事業が終わってから賃上げすればよい」という感覚のままだと、審査で大きく不利になりかねません。この記事では、第1回公募要領をもとに、枠の選び方から補助額・経費・要件・手続きまでを目次の順に整理します。

本記事の補助額・補助率・要件・スケジュールは、第1回公募要領 1.2版(2026年8月14日 改訂)にもとづいています。公募要領は必要に応じて改訂され、公募回によっても内容が変わります。申請を検討される際は、必ず公式サイト(https://shinjigyou-monodukuri.smrj.go.jp/)で最新の公募要領をご確認ください。本記事は制度理解を目的としたもので、採択・支給を保証するものではありません。

この補助金をひとことで

2つの制度が1つになった

ざっくり言うと、中小企業等が「新しい挑戦」のために行う設備投資を支援し、その成果を賃上げにつなげてもらうための補助金です。公募要領は目的を、新製品・サービスの開発、新市場・高付加価値事業への進出、輸出体制の強化の後押しによる生産性向上と賃上げと説明しています。

従来のものづくり補助金(第23次で終了)と新事業進出補助金(第4回で終了)の2つが統合され、1つの制度にまとめられたのが本制度です。旧制度は別制度としてそれぞれ個別に検討できましたが、本制度では3つの枠のうちどれを選ぶかという選択に置き換わりました。

note: 制度の全体像を新設発表の時点でまとめた別記事「【2026年新設】新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?」も公開しています。本記事は第1回公募の公募要領(1.2版)に基づいて、申請準備の実務に踏み込んだガイドです。
対象日本国内に本社・補助事業実施場所を持つ中小企業者、小規模企業者・小規模事業者、特定事業者の一部、特定非営利活動法人、農事組合法人、対象リース会社(中小企業等との共同申請)
革新的新製品・サービス枠/新事業進出枠/グローバル枠の3枠から1つを選択
申請単位1回の公募につき1事業者1申請(みなし同一事業者も合わせて1申請)
申請方法電子申請のみ。GビズIDプライムアカウントが必須
事業計画期間補助事業終了後 3〜5年(申請者が任意に設定)

なお、人手不足の解消に向けた省力化投資との違いは、中小企業省力化投資補助金(一般型)の解説記事で整理しています。

3つの枠の違い【一目でわかる比較表】

どの枠を選ぶかは「何をする事業か」で決まる

3つの枠は、補助額の大きさではなく自社の取り組みが「新製品・新サービスの開発」「新しい市場への進出」「輸出体制の強化」のどれかで決まります。全体像は次のとおりです。

支援する取り組み補助率補助下限額実施期間
革新的新製品・サービス枠技術的革新性のある新製品・新サービスの開発中小企業者:1/2(地域別最低賃金引上げ特例で2/3)
小規模企業者・小規模事業者、再生事業者:2/3
100万円交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)
新事業進出枠既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出中小企業者(小規模企業者・小規模事業者、再生事業者を含む)1/2(同特例で2/3)750万円交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)
グローバル枠海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化中小企業者(小規模企業者・小規模事業者、再生事業者を含む)一律2/3750万円交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)

表の補助下限額は、この制度が自社の投資規模に合うかを確かめる目安になります。新事業進出枠・グローバル枠の下限750万円に届かせるには、補助率1/2の新事業進出枠で補助対象経費1,500万円規模、補助率2/3のグローバル枠で1,125万円規模の投資が必要になる計算です。革新的新製品・サービス枠は下限100万円で、補助率1/2なら200万円規模から検討できます。計画がこの規模に届かない場合は、より小口の制度から検討したほうが早く進みます。

補助率でとくに間違えやすいのが新事業進出枠です。「小規模事業者だから2/3」と考えがちですが、この枠は小規模企業者・小規模事業者・再生事業者を含めて1/2です。2/3になるのは、革新的新製品・サービス枠の小規模企業者等・再生事業者、グローバル枠の全事業者、地域別最低賃金引上げ特例の適用時に限られます。小規模企業者・小規模事業者は、常勤従業員数が製造業・その他の業種で20人以下、商業・サービス業で5人以下(うち宿泊業・娯楽業は20人以下)の会社または個人です。採択後から交付決定までの間にこの定義から外れた場合、補助率は1/2になります。

自社はどの枠に当たるか|3つの質問

図1 3枠の選び方(判定フロー)

いいえ

はい

いいえ

はい

いいえ

はい

グローバル枠

Q1|自発的な海外販路の開拓へ※
国内の製造等の拠点を強化するか

Q2|製品も市場も
自社にとって新しいか

グローバル枠

新事業進出枠

Q3|新たな価値を提供する
新製品・新サービスを開発するか

新事業進出枠

革新的新製品・サービス枠

本補助金の対象外

革新的新製品・サービス枠

Q1から順に見ていき、最初に「はい」になったところが申請できる枠です。※Q1は、その市場が自社の既存事業では対象になっていなかった国・地域であることも条件です。

Q2の「新規性」はその事業者にとっての新規性で、日本初・世界初である必要はありません。

公募要領は該当しない例も挙げています。ここに当てはまる取り組みは、その枠では申請できません。

該当しない例
新事業進出枠①既存の製品等の製造量・提供量を増大させる
②過去に製造していた製品等を再製造等する
③単に既存の製品等の製造方法を変更する
④性能を定量的に計測できる場合に、その性能が有意に異なるとは認められない
⑤既存の製品等と対象市場が同一(需要が代替される場合・単なるメニューの追加)
⑥既存の製品等の市場の一部のみを対象とする
⑦既存の製品等が対象で、単に商圏が異なるだけ
革新的新製品・サービス枠①単に機械装置・システム等を導入するにとどまり、新製品・新サービスの開発を伴わない
②同業の中小企業者等(地域性の高いものは同一地域における同業他社)で既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発
③既存の製品・サービスの生産等のプロセスの改善・向上を図る事業

グローバル枠は「輸出」に絞られている

グローバル枠は、旧ものづくり補助金のグローバル枠(海外への直接投資・輸出・インバウンド対応・海外企業との共同事業の4類型)と名前は同じでも中身が変わり、対象は「海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化」の1類型だけになりました。公募要領は、①自社の製品等を活用して自発的に新たな海外販路を開拓するために必要な国内製造等拠点の強化であること、②その製品等の属する市場がその事業者にとって新たな海外市場(既存事業では対象になっていなかった国・地域)であることを求め、取引先主導の事業は自発的な取組と言えないため補助対象外と明記しています。

いくらもらえる?|従業員数別の補助上限額

補助上限額は従業員数の区分によって段階的に変わります。右の列の金額は、後述の「賃上げ特例」を適用した場合です。

① 革新的新製品・サービス枠

補助下限 100万円

従業員数補助上限額賃上げ特例適用時
1〜5人750万円850万円
6〜20人1,000万円1,250万円
21〜50人1,500万円2,500万円
51人以上2,500万円3,500万円

② 新事業進出枠/③ グローバル枠(補助上限額は共通)

いずれも補助下限 750万円

従業員数補助上限額賃上げ特例適用時
1〜20人2,500万円3,000万円
21〜50人4,000万円5,000万円
51〜100人5,500万円7,000万円
101人以上7,000万円9,000万円

表の従業員数は「常時使用する従業員」で数えます。これは労働基準法第20条の「予め解雇の予告を必要とする者」を指し、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者は含まれません代表者・役員が含まれない点は、公式FAQで示されています

note:「最大9,000万円」は、新事業進出枠・グローバル枠で従業員101人以上かつ賃上げ特例を適用した場合の金額です。従業員5人の事業者が革新的新製品・サービス枠で申請した場合の上限は750万円です。

何に使える?|補助対象経費

設備投資が計画の中心にあることが前提

本補助金は設備投資を支援する制度です。そのため、枠ごとに必ず補助対象経費へ含めなければならない費目が決まっています。

必ず含める経費建物費の扱い
革新的新製品・サービス枠機械装置・システム構築費対象外
新事業進出枠機械装置・システム構築費 または 建物費対象
グローバル枠機械装置・システム構築費 または 建物費対象

3枠に共通して対象になる経費

経費区分上限・条件
機械装置・システム構築費単価10万円(税抜)以上が対象
建物費(新事業進出枠・グローバル枠のみ)建設・改修等(注1)
運搬費/クラウドサービス利用費/原材料費原材料費は試作品開発用
技術導入費補助対象経費総額の 1/3
知的財産権等関連経費補助対象経費総額の 1/3
外注費補助対象経費総額の 1/4
専門家経費補助対象経費総額の 1/5(1日1人あたり5万円が上限)
広告宣伝・販売促進費事業計画期間1年当たりの、補助事業で新たに製造等する製品等の売上高見込み額(税抜)の 5%(注2)

グローバル枠だけで対象になる経費

経費区分上限・条件
海外旅費補助対象経費総額の 1/5。1渡航あたり事業者3名まで(専門家・通訳が同行する場合は追加2名まで)。1人あたり50万円(注3)
通訳・翻訳費30万円(税抜)

注1:建物費は金額にかかわらず、入札または相見積もりが必要です(後述の見積のルール)。
注2:計算式は「計画期間内の売上見込み額の合計 ÷ 計画年数 × 5%」です。
注3:1人あたり50万円は「補助金額として」の上限で、補助率2/3なら補助対象経費は75万円までという計算になります。

対象にならない主な経費

区分具体例
税・保険・利息消費税等の公租公課、各種保険料、借入金の支払利息
事務所の維持費事務所等の家賃・水道光熱費、敷金・保証金・仲介手数料
汎用品汎用性があり目的外使用になり得るもの(事務用パソコン、プリンタ、タブレット、スマートフォン、デジタル複合機、カメラ、書籍、家具家電など)
車両等自動車等の車両、船舶、航空機の購入費・修理費・車検費用
人件費・旅費自社の人件費、および海外旅費以外の旅費
販売用・試作関連販売・レンタルする商品、試作品・サンプル品・予備品の購入費
申請手続きの費用事業計画書・申請書・報告書など、事務局に提出する書類の作成・提出に係る費用
関係先への支払い申請者と同一の代表者・役員がいる事業者、みなし同一事業者、資本関係がある事業者への支払い
単なる置き換え既存の機械装置・システム等の単なる置き換えに係る経費

発注先の選び方|「相見積もり」は何社必要?

発注先を経済的・公正に選んだことを示す必要があります。相見積が要るかどうかは、品目1件ごとの金額ではなく、同じ発注先に頼む金額の合計で判定します。たとえば同じ会社に30万円の機械と25万円の付帯工事を発注する場合、1件ずつはどちらも50万円未満ですが、合計が55万円となり50万円(税抜)以上に達するため、3者以上の見積もりが必要です。

ケース必要なこと
契約(発注)先1件あたりの見積額の合計が50万円(税抜)以上3者以上の同一条件による見積もりを取得
50万円未満可能な範囲で複数の見積もりを取得し、最低価格を提示した者を選定
建物費金額にかかわらず、入札または相見積もり
中古品3者以上の古物商の許可を得た中古品流通事業者から、型式・年式が記載された相見積もり
広告宣伝・販売促進費金額にかかわらず、複数者からの見積もりと価格の妥当性が確認できる証憑
note:ペーパーカンパニーや販売実績が全くない業者からの見積もりは認められません。また、金融機関確認書を発行した金融機関や、事業計画の作成を支援した者への発注・見積もりも認められません(そのみなし同一事業者も同様)。

申請の条件|満たすべき「基本要件」

全枠共通の基本要件

補助を受けるには、3〜5年の事業計画で次の要件を満たすことが必要です。改訂により、付加価値額要件・賃上げ要件の文言が「事業計画を策定すること」から「事業計画を策定し、これを達成すること」へ改められ、達成までが要件だという建て付けが明確になりました。

#要件内容
1付加価値額要件事業計画期間において付加価値額の年平均成長率 +4.0%以上(付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)
2賃上げ要件(未達は返還1人当たり給与支給総額の年平均成長率 +3.5%以上。設定した目標値を交付申請時までに全ての従業員または従業員代表者へ表明することが必要(表明がなかった場合は交付決定が取り消され、補助金全額の返還
3事業場内最賃水準要件(未達は返還毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より +30円以上 高い水準。実施する事業場が複数ある場合は、最も低い事業場で判定
4ワークライフバランス要件応募申請時までに次世代法に基づく一般事業主行動計画を策定し、申請締切日時点で有効なものを「両立支援のひろば」に公表
5職場環境整備要件子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組みを1つ実施(後述)
6金融機関要件金融機関から資金提供を受ける場合のみ、確認書を提出(自己資金のみなら不要。複数行から受ける場合は任意の1者で可)

要件4は公表までに1〜2週間かかり、公募要領も2週間以上の余裕をもって公表申請するよう促しています。思い立ったらすぐ着手するのが正解です。

要件5の職場環境整備は、(ア)若手従業員が活用できるライフデザインサービス、(イ)家事代行・ベビーシッターサービス(いずれも公募要領が指定する事業者一覧のサービスに限る)、(ウ)子育て等に関する既存制度の従業員への周知・普及・啓発、の3つから1つを選んで実施します。事業計画に具体的内容と、一般事業主行動計画に留まらない追加的な取組であることの説明を記載し、実績報告時には証憑も提出します。プラチナくるみん・くるみん・トライくるみんのいずれかの認定があれば、この要件は免除されます。

2つの特例

特例追加で求められること効果使えない場合
賃上げ特例(未達は引上げ分を返還1人当たり給与支給総額を合計 年平均+6.0%(基準+3.5%に+2.5%上乗せ)/事業場内最低賃金を地域別最低賃金より +50円以上補助上限額を引き上げ(各表の括弧内)①申請額が各枠の補助上限額に達しない場合②革新的新製品・サービス枠で地域別最低賃金引上げ特例を申請する場合③革新的新製品・サービス枠・グローバル枠で申請する再生事業者
地域別最低賃金引上げ特例2024年10月〜2025年9月の間に、「当該期間の地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用する従業員が全体の30%以上である月が3か月以上ある補助を1/2から2/3へ引き上げ。あわせて、基本要件から「事業場内最賃水準要件」が除かれます補助率がすでに2/3の事業者(革新的新製品・サービス枠で申請する小規模企業者・小規模事業者および再生事業者、グローバル枠で申請する事業者)

賃上げ特例で見落としやすいのは、「補助上限額まで申請していないと使えない」という点です。上限額の引き上げが目的の特例ですので、上限に届かない申請では適用されません。改訂により、特例の目標値も交付申請時までに全従業員等へ表明すること、事業場が複数ある場合は最も事業場内最低賃金が低い事業場で判定することが明記されました。

申請できない事業者(主なもの)

区分内容
従業員0名応募申請時点で常時使用する従業員(3章参照)が0名の事業者は対象外。役員のみの法人は0名扱い
創業間もない事業者新規設立・創業後1年に満たない事業者は新事業進出枠に限り対象外(革新的新製品・サービス枠・グローバル枠は申請可)
16か月ルール申請締切日を起点に16か月以内に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・本補助金の交付候補者として採択された事業者(辞退を除く)、または締切日時点でこれらの交付決定を受けて実施中の事業者
過去3年で2回以上応募申請日を起点に過去3年間に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の交付決定を合計2回以上受けた事業者
みなし同一事業者議決権50%超の親子会社、代表者又は主要株主が住所とともに同じ法人、実質的支配者が同じ法人などは同一事業者とみなされ、1公募で1社しか申請できない(複数申請すると全社が要件不充足)
その他医療法人、宗教法人、みなし大企業、直近3年の課税所得の平均が15億円を超える中小企業者 など
note:過去に補助金を受けた事業者ほど、この欄の確認が最優先になります。16か月ルールと「過去3年で合計2回」は別々の条件で、どちらか一方に該当すれば対象外です。

審査のポイント|「足下の賃上げ」が加わりました

2026年8月14日の公募要領の改訂で、書面審査の「事業の実現可能性」に「足下の賃上げ」という評価軸が加わりました。

審査は書面審査が中心で、一定の審査基準を満たした事業者の中から、必要に応じて口頭審査が行われます。対象になった場合は、申請事業者自身(法人代表者等)が対応します。

何が評価されるのか

要点は次の3つです。

この審査軸は本制度だけでなく、省力化投資補助金・成長加速化補助金にも共通して入りました。「いつの時点の賃金から評価が始まるか」という時間軸の考え方は、3制度比較の記事で図解しています。

ここでいう1人当たり給与支給総額は、給与支給総額を従業員数で割った額です。給与支給総額には給料・賃金・賞与等が含まれ、役員報酬・福利厚生費・法定福利費・退職金は含みません。算出に含めるのは、基準年度と各事業年度で全月分の給与等の支給を受けた従業員だけで、期の途中の入社・退職者はその年度の算出から除きます。パートタイム従業員は正社員の就業時間に換算して数えます。基準年度は、公募要領が比較の基準に置いている補助事業実施期間の終了時点が含まれる事業年度です。

図2 賃上げをめぐる2つの区間

応募申請時の直近の事業年度 採択・交付決定 補助事業の実施期間 基準年度 補助事業終了後 3〜5年
足下の賃上げ(書面審査で評価)=物価上昇率を上回る程度
賃上げ要件 年平均+3.5%以上(特例は+6.0%)
表明のタイミング:交付申請時までに賃上げの目標値を、採択後から交付決定までの間に「足下の賃上げ」を、それぞれ従業員へ表明します

帯の長さは目安です。左側の帯(足下の賃上げ)は審査での評価対象、右側の帯(賃上げ要件 +3.5%以上)は未達なら返還の対象になります。

何が変わったのか

これまでの賃上げ要件は、「補助事業が終わったあと、3〜5年かけて年平均◯%上げる計画を出す」という組み立てでした。

今回加わったのは、そこに至るまでの期間、つまり「申請前の直近期から基準年度まで」の賃上げの実績も見るという観点です。旧ものづくり補助金(第21〜23次)と旧新事業進出補助金(第4回)の公募要領には、「足下の賃上げ」「物価上昇率」という語はありません。統合後に新しく持ち込まれた審査軸です。

早く動いた事業者ほど有利になります。申請書を書く段階になってから「では賃上げも計画に入れましょう」と決めても、足下の実績を後から作ることはできません。賃金を上げる意思決定を済ませているかどうかが、そのまま審査の評価に表れます

あわせて加点項目が17種に増えました

同じ改訂で加点項目が3種追加され、全17項目になりました。加点は採択率に直結するため、どれに当てはまるか(当てはめられるか)を申請準備の早い段階で確認しておきたいところです。項目の一覧は公式サイトの公募要領で確認してください。

加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります。認定・承認の取得には時間がかかるため、早い段階での棚卸しが効きます。

申請〜入金〜報告のスケジュール

第1回公募のスケジュール

区分日程
公募開始2026年6月29日(月)
申請受付開始2026年9月30日(水)
応募締切2026年10月30日(金)18:00(厳守)
採択発表2027年1月頃(予定
交付申請原則、採択発表日から2か月以内
補助事業実施期間交付決定日から10〜14か月以内(枠により異なる)

採択発表の「2027年1月頃」は公募要領に「(予定)」と記された見込みで、確定した日付ではありません。交付決定・事業実施・入金の時期も、これに連動して動きます。

応募から入金、その後の報告義務までを時間軸に並べると、次のようになります。

図3 申請から入金・報告までの流れ

2026年9月〜12月 2027年1月頃 +2か月以内 +10〜14か月 事業完了後
応募申請9月30日 受付開始 → 10月30日 18:00 締切
審査書面審査(必要に応じて口頭審査)
採択発表2027年1月頃(予定)
オンライン説明会採択された事業者は参加が義務
交付申請 → 交付決定採択発表日から2か月以内に交付申請
補助事業の実施交付決定日から10〜14か月以内(枠により異なる)
10〜14か月
実績報告事業完了日から30日を経過した日など早い日まで
確定検査 → 請求 → 入金実績報告のあと
事業化状況報告事業完了年度の終了後を初回に5年間・計6回
5年間

棒の長さは目安で、実際の期間の比率をそのまま表したものではありません。交付決定日以降の各段階は、日付ではなく「交付決定日から◯か月」という相対的な期間で定められています。

図に収まらない実務上の要点は、次のとおりです。

note:お金の流れは誤解が多いところです。補助金は後払い(精算払い)で、事業費はいったん自己資金で立て替えることになります。そして交付決定の前に発注・契約・支払いをしてしまうと、その経費は対象外です。採択と交付決定は別で、動かしてよいのは交付決定の通知を受けてからです。

よくあるご質問

Q. 設備を新しいものに入れ替えるだけでも使えますか?

A. 使えません。単なる置き換えは対象外で、開発を伴わない導入は枠にも該当しません(2章4章)。

Q. 小規模な事業者でも補助上限額は2,500万円ですか?

A. 枠と従業員数で変わります。革新的新製品・サービス枠は1〜5人なら750万円です(3章)。

Q. 小規模事業者なら補助率は2/3ですか?

A. 枠によります。新事業進出枠は小規模企業者・小規模事業者・再生事業者を含めて1/2です(2章)。

Q. グローバル枠はインバウンド対応にも使えますか?

A. 使えません。対象は輸出体制の強化の1類型のみです(2章)。

Q. 賃上げは補助事業が終わってから考えればよいですか?

A. それでは審査で不利になります。申請前の直近事業年度から基準年度までの賃上げが審査で評価されます(6章)。目標値を交付申請時までに従業員へ表明しなければ、交付決定が取り消され全額返還です(5章)。

こんな企業におすすめ

自社の技術力を活かして新製品・新サービスを開発したい → ① 革新的新製品・サービス枠(補助下限100万円から。創業1年未満でも申請できます)
既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業へ進出したい → ② 新事業進出枠(建物費も対象。補助下限は750万円)
自社製品の輸出に向けて国内の体制を強化したい → ③ グローバル枠(補助率は一律2/3。海外旅費・通訳翻訳費も対象)

補助下限額(革新的新製品・サービス枠は100万円、新事業進出枠・グローバル枠は750万円)に計画が届かない場合は、より小口の別の制度を検討する道もあります。

まとめ

最後に、この記事の要点を整理します。

  • 旧ものづくり補助金と旧新事業進出補助金を統合した制度で、3つの枠から1つを選んで申請する。1回の公募につき1事業者1申請
  • 枠は輸出体制の強化か、新規性のある製品等で新市場に出るか、自社の技術力で新製品・新サービスを開発するかで分かれる。単なる設備の導入・既存プロセスの改善は対象外。補助率はグローバル枠が一律2/3、新事業進出枠は小規模でも1/2
  • 補助上限額は枠 × 従業員数で決まる。革新的新製品・サービス枠は750万〜2,500万円、新事業進出枠・グローバル枠は2,500万〜7,000万円の4段階。下限は100万円/750万円。下限750万円に届かせるには、補助率1/2の新事業進出枠で1,500万円規模、補助率2/3のグローバル枠で1,125万円規模の投資が要る計算
  • 経費は設備投資が中心にあることが前提。革新的新製品・サービス枠は機械装置・システム構築費が必須、新事業進出枠・グローバル枠は機械装置・システム構築費か建物費のいずれかが必須。汎用品・車両・自社の人件費・申請書類の作成費は対象外
  • 「足下の賃上げ」が審査に入った。申請前の直近期からの賃上げ実績が評価され、採択後〜交付決定までに従業員への表明が必須。加点項目は17種に増えた
  • 基本要件は6つ。賃上げ+3.5%と事業場内最低賃金+30円は、未達なら返還。賃上げの目標値を交付申請時までに従業員へ表明しなければ、交付決定が取り消され全額返還
補助金は、制度を早く知り、順序どおりに準備した事業者が使える仕組みです。金額の大きさで枠を選ぶのではなく、自社が本当にやりたいことがどの枠に当たるのかから考えると、計画にも筋が通ります。

他の制度と見比べたうえで決めたい方は、補助金3制度の選び方|新事業進出・ものづくり/省力化/成長加速化を比較もあわせてご覧ください。

今すぐできる小さな一歩

紙でもメモアプリでもかまいません。「①自社の従業員数」「②直近3期の1人当たり給与支給総額の推移」「③過去3年間に受けた補助金の交付決定の履歴」の3つを書き出してみてください。この3行だけで、どの上限額の行に当たるのか・足下の賃上げで不利にならないか・そもそも申請できるのかという、最初の3つの分かれ道が見えてきます。自社に合う枠や計画の立て方に迷われた際は、樫乃屋でも初回のご相談を無料で承っております。

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※本記事は2026年8月23日時点で確認できる公式情報に基づく解説で、金額・補助率・要件・スケジュールは第1回公募要領 1.2版(2026年8月14日 改訂)によります。公募要領は必要に応じて改訂され、公募回によっても内容が変わるため、実際の申請前には必ず最新の公募要領および公式サイト(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト)をご確認ください。本記事は制度理解を目的とするもので、補助金の採択・支給を保証するものではありません。